月末になると、勤怠データの集計に時間がかかる。
受発注はExcelで管理し、同じ内容を別のシステムへ入力している。
会計処理にも手入力が残り、担当者の作業量がなかなか減らない。
こうした仕事が続いていると、「そろそろシステムを入れた方がいいのではないか」という話が出てきます。
東京都では2026年9月28日、令和8年度第2回「中小企業デジタル導入促進補助事業」の募集が始まりました。新たに導入するソフトウェアやクラウドサービスなどに対し、最大150万円が助成されます。
ただ、同じようにデジタル化を考えている会社でも、制度の使い方は同じではありません。
すでに導入したいツールまで決まっている会社と、「何かデジタル化した方がよい」と感じているものの、何を変えるべきかが定まっていない会社では、次に取るべき行動が違います。
今回の制度を考える前に、自社がいまどちらの段階にいるのかを整理しておく必要があります。
ツールが決まっている会社は、制度を確認する段階へ
勤怠管理を変えたい。受発注をシステム化したい。手入力している会計処理を減らしたい。
こうした課題がすでに明確で、導入するツールも具体的に検討している会社であれば、今回の補助制度が使えるかを確認する段階です。
対象は都内中小企業者等。第2回の申請期間は2026年9月28日から2027年1月29日までで、申請期間中でも予算額に達した場合は受付を終了する場合があります。
助成限度額は150万円、助成率は原則2分の1以内です。小規模企業者、または環境負荷軽減に資するツールを導入する場合は3分の2以内となります。
対象となるのは、新たに導入するソフトウェアやクラウドサービスなど。会計、受発注、出退勤管理などが対象経費の事例として示されています。
自社ですでに必要性を認識している投資があり、その費用負担を今回の制度で軽減できるか。この順番で確認すれば、制度ありきの投資になりにくくなります。
「デジタルなら何でも対象」ではない
導入するものが決まっていても、それだけで補助対象になるとは限りません。
PCやタブレットなど、多用途に使える汎用機器は対象外です。OS、セキュリティソフト、表計算・文書作成ソフトなど、汎用性の高いソフトウェアも対象外とされています。
一方、導入するソフトウェアと連携し、特定用途で使用する専用ハードウェアは対象になり得ます。
「ハードウェアは対象外」「デジタル製品なら対象」と単純に分けられる制度ではありません。
もう一つ注意したいのが、製品そのものの扱いです。
東京都中小企業振興公社は、個別の特定製品やサービスを、本事業の対象製品として認定しているわけではありません。
販売会社から「補助金の対象になる製品です」と案内された場合でも、それだけを理由に導入を決めるのではなく、自社の課題に合う製品か、そのうえで制度の対象になるかを分けて考える必要があります。
まだツールが決まっていないなら、申請を急がない
一方、「業務を効率化したい」と感じていても、どの仕事を変えるのか、どんなツールが必要なのかまで決まっていない会社もあります。
その段階で補助制度から製品を探し始めると、「使える補助金に合わせてツールを選ぶ」という順番になりかねません。
東京都は「中小企業デジタル化ファーストステップ支援事業」も実施しています。
この事業では、企業の課題を整理し、必要なデジタルツールを提案したうえで、補助金などを含む適切な支援策につなげる流れが示されています。
つまり、「何を導入すればよいか分からない」という段階そのものを支援する仕組みがあります。
補助金申請を急ぐより、勤怠なのか、受発注なのか、入力作業なのか、担当者に集中した仕事なのか。自社でどこを変えたいのかを整理する方が先です。
DXそのものをどこから考えるかについては、関連記事で詳しく整理しています。
「中小企業のDXは何から始める?『ツール導入』で終わらせないための進め方」

補助金を見る前に、自社がどの段階かを確認する
今回の第2回募集は、すでにデジタル投資を具体化している会社にとって、費用負担を軽減する選択肢になります。
一方、まだ「何を入れるか」が決まっていない会社は、補助制度を探すより先に、変えたい仕事を整理する段階です。
自社は、申請を検討する段階なのか。それとも、まだ課題を整理する段階なのか。
今回の制度は、まずそこを切り分けて考えるところから始まります。
参考資料
東京都「都内中小企業のデジタルツール導入を支援します」

東京都中小企業振興公社「中小企業デジタル導入促進補助事業」

東京都「中小企業デジタル化ファーストステップ支援事業」
情報確認日:2026年9月29日

